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初出: 絶縁破壊技報 No.3
Web版: 2009. 10. 25

デジタルディップメーターの製作


かつてアマチュア無線の測定器として定番だったディップメーターの製作です。ディップメーターとは、主としてLCネットワークの共振周波数(同調点)を探るための測定器で、回路に直接プロービングせずしかもインサーキットで測定できるのが特徴です。それだけでなく、簡易SGやQの測定など数多くの応用があります。このため、ラジオセット(RF回路)の製作・調整には欠かせない測定器でした。しかし、現在はスペクトラムアナライザやネットワークアナライザの普及により、プロの現場では出番がめっきり減ってしまいました。電子工作においてもアマチュア無線そのものの衰退に伴い、滅多に取り上げられなくなっています。それでも現在においてもラジオセットの製作・調整にディップメーターが有効であることには変わりありません。

ディップメーターには主要部品として真空管やバリコンが使われていました。現在はそれらは入手困難になっているため、そのままの再現は既に困難な状況です。そこで、現代風にアレンジして全てソリッドステート部品で構成して再現してみました。

ディップメーターの原理

図1. 一般的なディップメーターの外観
fig.1

ディップメーターは一般的に図1に示すような形状をとります。これは真空管の時代からほとんど変わりません。本体の上部には発振回路が組み込まれていて、プラグインコイルは本体上面にあるソケットにセットします。バリコンの軸には目盛板が取り付けられていて、各プラグインコイルに対応する共振周波数が刻まれています。各コイルはその目盛の示す周波数で発振することになります。バーニア機構がある場合そのツマミで、無い場合は目盛板がダイアルなのでそれを回して周波数を調整します。ダイアルの下側には検流計が取り付けられています。メーターの精度は必要ないため、最近の機種では安価なラジケータが使われることが多いです。あとは発振レベルを調整するボリウムと電源スイッチだけという、至ってシンプルな構成になっています。

グリッドディップメーター

ディップメーターの回路
図2. 真空管式DM
fig.2

図2に真空管式ディップメーターの代表的回路を示します。言うまでもなく典型的なコルピッツ発振回路ですね。共振回路はプラグインコイルL1と2連バリコンVC1によって構成されていて、fo = 1/(2π√(L・C))で決まる周波数fo[Hz]で発振します(LはL1[H]、CはVC1の直列合成容量[F])。発振周波数はバリコンの調整とプラグインコイルの交換により、非常に広い範囲で可変させることができます。B電源はVR1で分圧してプレートに供給されていて、これにより発振レベルを調整することができます。

このほかハートレー発振回路を使用した例もありますが、プラグインコイルにタップが必要になるので殆ど採用されていません。コルピッツ発振回路では二連バリコンが必要になる代わりに、タップなしの単純な構造のプラグインコイルが使えます。

発振レベルの検出
図3. 動作波形
fig.3

図3に発振動作中のプレート電圧とグリッド電圧の波形を示します。黒線は発振レベルが高いとき、灰色の線は発振レベルが低いときの波形です。真空管のグリッドには共振回路からフィードバックされた交流成分が加えられますが、グリッドの整流作用(グリッドカソード間に正電圧が加わるとグリッドからカソード向かって電流が流れる)により波形の+ピークが0V付近にクランプされています。したがって、グリッド電圧には負の直流成分が発生することになります。グリッドは検流計を通してアースに接続されているので、アースから検流計を通ってグリッドへ向かう直流電流が発生し、検流計が振れます。オフセット電圧はグリッド電圧の振幅に比例するので、検流計の振れは発振レベルに比例したものであると言えます。

被測定回路との相互作用
図4. 被測定回路との結合
fig.4
図5. 測定中の等価回路
fig.5

さて、未知の共振周波数、fx = 1/(2π√(Lx・Cx))のLC共振回路をディップメーターで測定する場合、まず図4のようにプラグインコイルを被測定回路のコイルに近づけて結合させます。2つのコイルが磁気的に結合するということはトランスと同じなので、図5に示すような等価回路で表せます。Rsはコイルの抵抗成分です。実際の測定では、相互の影響(中心周波数のずれ)を抑えるためなるべく疎結合で行われるので、Mは相対的に非常に小さな値となります。

fo ≠ fx のときは二次側は誘導性または容量性の高いインピーダンスを示し発振回路にはほとんど影響を与えません。VC1を変化させていき fo = fx になると、二次側のインピーダンスはRsだけとなり、共振電力の一部が被測定回路に消費されます。これは発振回路から見るとQの低下(=発振ループ内の損失の増加)として現れ、それだけ発振レベルは低下することになります。そして、発振レベルの変化は検流計の振れの変化として現れるので、これによりfxを知ることができます。このように、発振レベルの低下がグリッド電流の低下(ディップ)として検出されることから、グリッドディップメーター(GDM)と呼ばれています。

仕様の検討

ソリッドステート化

何分とうの昔に廃れた技術なので、実際にディップメーターを製作しようとした場合に問題になるのが主要部品である真空管と二連バリコンの入手です。これらの部品は既に入手が困難になっているので、そのままの回路で製作というわけにはいきません。現在はトランジスタやバラクタなど半導体部品で取って代わられているので、それで置き換えてやればよいはずです。

発振回路の条件

ということで、トランジスタで発振回路を組んで「ハイOK」と行きたいところですが、それではディップメーターとして使える特性にはなりません。結論から言うと、半導体回路でよく使用されている高周波発振回路は、ディップメーターには適していないのです[2]。それらの多くは、発振を開始するとアンプが飽和するまで振幅が増大します。このようにアンプのゲインに余裕がありすぎて飽和レベルに貼り付いている場合、共振回路の損失が多少変わった程度では発振レベルは変わりません。つまり、ディップメーターとしては感度が低くて使い物にならないということです。

リニア領域で発振させるには、アンプにAGC(自動ゲイン制御)をかけて発振レベルを制御する必要があります。実は、図2に示した発振回路はAGCアンプとして動作していているのです。発振レベルに比例して発生するDCオフセットがそのままグリッドバイアスになっている点がミソで、発振レベルが上がる→グリッドバイアスが深くなる→真空管の増幅率(Yfs)が低下する→発振レベルが下がる、というフィードバックループ(いわゆるリバースAGCの一種)で発振レベルが制御され、動作範囲に比べてはるかに小さなレベルで安定しているのです。つまり、検流計の振れ(=グリッドバイアスレベル)はAGCのかかり具合を示しているとも言えます。また、ゲインは電源電圧にも依存するので、検流計の振れが適当なレベルになるよう電源電圧を調整して使うことになります。

半導体で構成した発振回路
図6. 半導体式DM
fig.6

図6に真空管をトランジスタに置き換えた回路を示します。これは現在の半導体式ディップメーターの多くが採用する発振回路です。回路上の大きな違いは二つあります。一つは発振レベルの調整方法で、これはトランジスタの特性が電源電圧の影響を受けにくいため、代わりにソース電圧を変えることによりゲートバイアスを直接シフトしてゲイン調整を行っています。もう一つは低い電源電圧を有効に使うため負荷抵抗をチョークコイル(RFC)に置き換えた点です。これにより動作範囲が抵抗の約2倍になります。RFCの使用はチューニングによるレベル変動や自己ディップが起きやすくなるので、使わずに済むならその方がベターです。D1は波形のピークをクランプしてゲートバイアスを生成するためのもので、RF検波用を使用します。

バリコンの代替
写真3. バリコン
photo.3

バリコンは現在も現役で小型ラジオ用や高周波電力用に製造されています(写真3)が、周波数を正確に読み取るために大きなダイアルが必要なことは変わらず、小型化は困難になります。せっかく新しく設計するのだから、これもソリッドステート化することにしましょう。バリコンの代替にはバラクタ(可変容量ダイオード)といって電圧で端子間容量を可変できる半導体部品を使います。パッケージは普通の小信号ダイオードと変わりません。バラクタは、バリコンに比べ次のような特徴があります。

ダイアルの代替

バリコンと共に目盛板も無くなってしまうので、別に発振周波数を知る手段が必要です。これは周波数カウンタで発振周波数を測定してLCDに数値表示することにします。カウンタ式周波数表示はダイアル式に比べて、次のような特徴があります。

周波数カウンタで発振周波数を測りながら目盛板に目盛を刻んでいく作業は意外に骨の折れるものです。カウンタ式なら発振周波数そのものを読むので、そのような作業は必要ありませんし、プラグインコイルをラフに扱って周波数が変わってしまっても発振している限り問題はありません。このようにカウンタ式は目盛板に比べてはるかに優れた使い勝手が実現できます。特に最後の項目は、測定対象に適したプラグインコイルをその都度作って最適条件で測定が行えるという、大きな利点となっています。現在市販されているディップメーターも周波数表示はカウンタ式が主流です。

検流計の代替
写真4. ラジケータ
photo.4

検流計として普通はラジケーター(写真4)または汎用のパネルメーターが使われます。しかし、これも大きな部品なので別の手段での表示を検討します。LCDには周波数を表示しても十分な余裕があるので、そこを使って表示するといいかもしれません。これは、表示制御用マイコンの内蔵ADCで発振レベルを取得して表示すれば良いのですが、レベルを数値で表示しても意味がありません。必要な情報はレベルの変化なので、それが直感的に分かるようにポイントやバーで表示する必要があります。しかし、キャラクタLCDの似非グラフィック表示では分解能が低く、微妙なディップが読み取れない可能性もあります。

ハードウェア

本機の特徴は、コイルだけでなく発振回路までプラグインモジュールにしたことです。普通のディップメーターでは発振回路(バリコンやアンプ)は本体内部に作り込まれ、コイルだけを差し替えてバンドを切り替えています。しかしそれでは、上限・下限付近で回路定数に無理が生じるため、100からせいぜい数百程度の周波数比しかカバーできません。そこで、発振回路までプラグインにして差し替えてしまえば、個々のプラグインの受け持つ周波数帯に応じた最適な発振回路にできます。これは電子同調ならではの構成といえるでしょう。このアイディアは昔からあり、既存のディップメーター(DELICA SP-3型やMeasurements model 59など)にも同じ目的で発振回路部(つまり電源部と検流計以外の全て)を外部モジュールにした構成をとるものがありました。

本体

写真5. 本体内部と回路図
photo.5

右にディップメーターの本体内部と回路図を示します。基板は秋月のアクリルケース(SK-16)に納めています。本体の形状は古典的なディップメータにとらわれず、実際の使用を想定して決定しました。昔はセットの中にプラグインコイルを突っ込むようにして測定していましたが、現在はセットが小型化されているし、また机の上に平置きした基板を測ったりするのに都合がよいように、コイルが手前を向くようにしています。

本体側にはディップメーターの機能として周波数カウンタとレベル検出回路そして電源部を設けてあります。また、プラグインモジュールを制御するため、チューニング電圧発生回路と発振レベル制御回路も設けます。

モジュールへの供給電圧は、電源(5V)、チューニング電圧(1~25V)とゲイン設定電圧(0~4V)です。チューニング電圧はDC-DCコンバータで25Vを生成し、10回転ボリウムで電圧を調整してモジュールに供給します。レベル調整はゲイン設定電圧でトランジスタのゲートバイアスを制御することにより行います。

周波数カウンタの入力部はLOWレンジとHIGHレンジに分けます。LOWレンジ(10kHz~30MHz)は増幅・整形のみ、HIGHレンジ(10MHz~1.1GHz)はプリスケーラIC(1/64)を通してカウンタ回路に入力します。どちらを使うかはプラグインモジュール側でのFsel信号の処理(OPEN/GND)で決定し、使わないブロックの電源は切っておきます(ここでの消費電流が意外にバカにならないので)。また、それぞれの入力は整流・平滑され、マイコンのADCにも入力されます。VR3は半固定で、発振回路が飽和しないレベルでメーターの振れが最大になるように調整します。 取得された発振周波数と振幅レベルはマイコンで処理して16桁×1行のキャラクタLCDに表示します。

プラグインオシレーター

写真6. プラグインオシレータ
photo.6
回路図: MF/HF | VHF | UHF

右にに製作したプラグインオシレーターとそれぞれの回路を示します。発振回路部は回路のバリエーションでMF/HF帯、VHF帯、UHF帯の3つの帯域に分けました。

最初は発振回路とコイルは一体化するつもりでしたが、広い周波数範囲をカバーするには製作するプラグインの数がかなり多くなってしまい、意外と面倒です。このため、さらにプラグインモジュールのコイルも交換できるように子亀孫亀方式にしました。もちろん、任意のコイルを使うためにもコイルが交換できる必要があります。

MF/HF帯とVHF帯用のオシレーターではスイッチでコンデンサーをバラクタに並列に入れることにより、周波数範囲を下方向に拡大してバラクタの可変範囲の狭さをカバーするようにしています。

UHF帯ではコイルがコイルの形ではなくなり、コネクタで差し替えることは困難になります。したがって、UHF帯用についてはオシレーターモジュールを複数作ってカバーするしかありません。

プラグインオシレーターはピンソケット(5×2)で本体に接続します。誤挿入を防止するため一本のピンをキーにしておきます。

プラグインコイル

写真7. プラグインコイル
photo.7

プラグインコイル(写真7)はピンソケット(4×1)でプラグインオシレーターに接続します。コイルは外径10mmのアクリルパイプに巻き、ピンソケットは接着剤などでパイプにしっかりと固定します。

コイルは巻数が多くなるにしたがって分布容量や巻線抵抗がコイルの性能に悪影響を与えるようになり、計算通りの特性が出なくなります。特に数MHz以下のコイルになるとこれが顕著に表れてきます。分布容量は巻線間の静電容量によるもので、コイルに並列にコンデンサーが接続されたイメージになります。これ大きいと周波数の可変範囲が狭くなってしまうので、ハニカム巻や分割巻きなど分布容量がなるべく小さくなるような巻き方をする必要があります。また、巻線抵抗が増えるとそれだけコイルのQが落ち、発振が不安定になったり感度が落ちることになるので、リッツ線を使うなどして表皮効果の影響を抑える工夫も必要です。

ソフトウェア

マイコンのF/Wは単純に周波数とレベルを計測してLCDに表示するだけで、外部回路の能動的な制御やユーザ入力はありません。

周波数の表示

発振周波数を測定・表示します。AVRのカウンタに外部入力できる周波数はシステムクロックの1/2.5までなので、この回路の場合は約8MHzまでとなります。これ以上の周波数レンジでは外部プリスケーラを使用することになります。しかし、プリスケーラIC MB501の入力周波数レンジが10MHz~(実際は1MHz程度でも動作する)なので、8~10MHzが歯抜けになってしまいます。そこで、マイコンの手前にバッファカウンタを設けて16分周してマイコンに入力することにしました。これで128MHz(またはフロントエンド~74HC393の能力)まで入力できるようになります。AVRのカウンタは8ビットタイマ0を使用し、これのオーバーフローも計数して合計28ビットのカウンタを構成しています。

カウンタのゲート信号は16ビットタイマ1のPWM出力で制御(200ms開き1ms閉じるの繰り返し)し、ゲートを閉じた瞬間に発生する割り込みでカウンタ値を読み取って、前回からの増分×5が周波数[Hz]となります。1/64プリスケーラを使用中の場合は、さらに値を64倍して合わせます。このようにして得られた周波数は上位5桁を毎秒5回の更新頻度でLCDに表示します。ディップメーターとしては十分な分解能といえるでしょう。

発振レベルの表示

発振レベルはマイコン内蔵のA-Dコンバータで取得します。基準電圧は1.1Vを使用しています。レベルの表示更新は高速に行っても意味がないのとLCDへの表示処理の時間の関係で毎秒30回としました。ただし、鋭いディップを見逃さないようにするため、1kHzのサンプルレートで取り込んで処理しています。得られたレベル値は、変動が見やすいようにADC入力レンジの上半分をフルスケールとしてLCDに表示しています。

図7. CLCDのアナログ表示
fig.7

指針のインジケータはユーザ定義文字を使い、図7に示すように斜線にしています。このようにする理由は、キャラクタLCDの表示機能の制限からです。キャラクタLCDでは一桁あたり水平5ドットの構成になっていますが、隣の文字との間が1ドット分空いているので、実質的に一桁あたり水平6ドット幅となり、そのうち1ドット分が隠れているイメージになります。それなので、隠れた部分の表示が分からなくなってしまいます。この問題は、エッジを斜線にして隠れる部分にまたがるようにすることにより避けることができます。

また、表示ポイント数は縦線の場合は桁数×6ポイントになるところ、斜線の場合は図8に示すような処理によって見かけ上の分解能を上げることができます。今回はメーター表示用に右半分のエリア8桁分を使用し、130ポイントの分解能を実現しています。このくらいの分解能であれば小型メーターと比べても遜色ないと思います。

レベルのダイナミックな変動は、オーディオレベルメーターのようにピークホールド(下方向なのでノッチホールド)して表示(保持時間0.5秒)し、ディップ点を見つけやすいようにしています。これはアナログメーターには無いデジタル処理特有の機能といえるでしょう。ついでにスキャンも自動でできるようにしてしまった方が良かったかも知れません。

バッテリレベルの表示

本機はバッテリ動作なので、2秒毎にバッテリ電圧を測定してアイコン(ユーザ定義文字)で表示します。消費電流は約60mA程度(プラグインによって変わる)だったので、7.2V 300mAhのニッケル水素電池を使った場合、4~5時間の持続時間となります。

結果と考察

測定可能範囲と感度

表1. 周波数レンジ
オシレータコイル周波数帯
MF/HFAコア入230kHz~1.5MHz
Aコア無650kHz~3.5MHz
B2.5MHz~13.6MHz
C5.5MHz~29MHz
VHFC19.5MHz~45MHz
D35MHz~80MHz
E60MHz~135MHz
F125MHz~275MHz
UHF1-720MHz~1000MHz
UHF2-500MHz~700MHz
UHF3-370MHz~500MHz

測定レンジは表1のようになりました。オシレーターをうまく作ってやれば1.2GHz帯にも届きそうです。まだUHF帯に一部歯抜けになったままのバンドがあります。UHF帯ではバラクタの容量変化比が小さく、また浮遊容量の影響も大きくなるので、周波数変化比は1.4程度になってしまいます。コイルの交換も困難なので、多くののプラグインオシレータを作らなければなりません。

肝心要のディップメーターとしての感度ですが、ディップ点では表示が振り切れるほど鋭敏に反応します。とりあえず、期待した性能は出ているようで、十分実用になるレベルといえます。この辺はオシレータモジュールの出来の良し悪しで決まるので、問題があったとしても、あとからチューンナップが可能です。

ディップメーターの基本的な使い方

周波数の未知な共振回路の共振周波数を測ることがディップメーターの目的で、ほとんどの拡張的アプリケーションはこの機能を巧みに応用したものです。

  1. 推定される共振周波数をカバーするレンジのコイルを選択します。
  2. メーターの振れが適当になるように発振レベルを調整します。
  3. 被測定回路にプラグインコイルを近づけて結合させます。磁気シールドコイルやトロイダルコアなど磁気的な結合が難しいときは、リンクコイル等を使って結合します。
  4. 周波数を低い方から高い方へゆっくりスイープします。
  5. 途中でメータの指示がディップしたら、コイルを少しずつ離しながらその周波数の周辺を探ります。
  6. 疎結合になるに従ってディップは浅くまた鋭くなってきます。ディップ点が分かったら周波数を読み取ります。

被測定回路に結合すると発振周波数は多かれ少なかれ目盛の指示からシフトします。これはそのまま測定誤差になるので、正確な測定のためディップを認識できる範囲で可能な限り疎結合で行うのが鉄則になっていました。カウンタ方式なら実際の発振周波数を測るため、常に正確に周波数を読み取ることができます。もちろん、ディップ点の特定手順はダイアル式と変わりません。

最後に

「デジタル3年、アナログ 8年、高周波に至るは 18年」。これは電子回路技術の分野で一人前のエンジニアになるため必要と言われている経験です。高周波回路は電子工作の中でも理論・経験ともに難易度の高い部類といえます。

自作派ハムなら当たり前のように持っているスキルですが、今はアマチュア無線の衰退とともにハム自体が絶滅危惧種になってしまいました。プロの世界はというと、こちらもアナログに精通したエンジニアは希少な存在(爺さんばっかりで後釜がいない)となっていて、泥船上の日本の電子技術は将来が危惧される事態になっています。それでも最近はマイコンの台頭で電子工作の幅は広がり、オームの法則を知らない小学生でもマイコンを使いこなしている時代です。このように、時代はデジタルなどと言われてアナログ技術の必要性は相対的に低下しているように見えます。しかし、それは単に扱う情報がデジタルなだけであって、その実体はアナログ回路なのです。このように全てはアナログ技術の上に成り立っているので、地味ではあっても広い範囲にわたる基礎的な技術は大切にされるべきであると思います。というか、電子回路エンジニアなら電磁気学くらい履修していて当然ですけど。

…とか何とか書いていますけど、私も高周波回路に関しては専門外で馴染みは薄かったりします(仕事で簡単な治具や特小機器の設計をした程度)。だから、電卓とスミスチャートで設計してしまうアナログ技術者に会ったりするといつも憧れてしまいますね。というわけで、趣味の高周波回路の原点に立ち、その基本的な測定器であるディップメーターなるモノをやってみることにしました。高度なデジタル技術が手軽に利用できるようになった現在、RFアナログ技術とデジタル技術の折衷が面白いのではないかと見ています(これは現在の電子技術の花形でもありますが)。

資料

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参考文献

[1]はディップメーターの様々な応用を紹介した名著です。論理的解説はあまりなく、応用面に重点が置かれた編集となっています。[2]はディップメーターの動作原理を詳解し、それに適した回路の条件をシミュレーションによる解析を駆使しながら導き出しています。実際にディップメーターを設計する際は、これらを読んでみるとよいでしょう。

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