簡易型のディジタルディレイ方式サラウンドプロセッサです。専用ICなどは一切使用しないで、容易に入手できる部品だけで製作してみました。
この製作の目玉は、サラウンドプロセッサに必須となる数10msのディレイ回路を汎用部品で組んだことです。回路全体も単純で、特別難しい点はありません。
このサラウンドプロセッサは、2チャネルのステレオソースを加工して臨場感を出すタイプのものです。それらの多くは、音声に含まれる残響成分を取り出していろいろ加工をして元の信号に加えたり、リアスピーカから出したりしてサラウンド効果を実現しています。
さて、それではどうやってステレオソースから残響成分を取り出すのでしょうか。通常、音声(ヴォーカルや個々の楽器)は、左右のチャネルにほぼ同じ位相で含まれています。でも、それらの残響成分は左右で位相がランダムな状態となっているのです。これに着目して、何とかして同相成分を消してやれば残響成分だけ取り出せます。
これは、左右の信号を差動アンプで減算することで容易に実現できます。もちろん、残響成分だけでなく、パニングされた音声なども左右の差として一緒に取り出されてしまいますが、実用上はあまり問題になりません。また、ソースの状態によってもその効果は大きく変わります。生録など加工されていないソースより、ディジタル編集で残響成分を加えられたものの方がきれいに取り出せるようです。試しにバラックで回路を組んで実験してみるとこの効果を簡単に確かめられます。ヴォーカルやベースの音声はほとんど消え、残響成分が主に取り出されているのが分かるでしょう。
そのようにして取り出された音声の残響成分は、音がホール内で反射して戻ってくる時間に相当するディレイをかけます。一般的に、このディレイ処理が各種サラウンドプロセッサの要になっています。ディレイ時間は、数10ms程度が一般的なようで、この時間により臨場感の傾向が変わります。
残響成分はパワーアンプを通してリアスピーカーから出します。実際には残響音はあらゆる方向から来るわけですが、メインスピーカーが前にあるので、後ろを補って音に囲まれるようにするのです。
ここから先は、サラウンドプロセッサの回路図を見ながら読んでください。
オペアンプで作動増幅回路を組んで左右の信号から差を取り出します。このとき、高い周波数成分は LPFで取り除いておきます。
これらも汎用ICで組みます。コンパレータとF/Fを使った単純なDM(Delta Moduration)で、1ビット、2Msa/secのディジタルデータに変換します。ディジタルディレイを経た後 D-A変換でアナログ戻すときは、ディジタルデータを A-Dの積分器と同じ時定数で積分するだけです。その後、LPFを通して不要な周波数をカットします。このような A-D、D-A変換ではS/Nはあまり良くはありませんが、リアスピーカから出力するのでノイズはほとんど気になりませんでした。
ディジタルディレイに必須となるFIFOメモリには、DRAMを使用しています。回路上は 64K x 1bitのDRAMで良いのですが、手持ちにあった256Kbitの物を使用しました。シフトレジスタ(74HC164)で、リード・モデファイ・ライトサイクルを生成して1サイクルで最も古いデータの読み出しと最新データの書き込みをしています。
さらに、アドレスカウンタの下位側をDRAMの行アドレスとしているので、1サンプル毎に行アドレスが回ることになり、これでリフレッシュ動作も兼ねています。アドレスカウンタは65536で1サイクルなので、2Msa/secの場合は約33msのディレイ時間となります。
