ELM Home Page


2015. 10. 11

パッシブストロボスコープ


前回製作したような普通のストロボスコープでは、観測対象をパルス発光する照明で照らすことによって、対象の動きの瞬間を切り取って観測しています。この方式の欠点は、暗室や夜間など環境光が十分に少ない場所でないと使えないということです。例えば、照明の明るい屋内や日中の屋外などではストロボスコープは使えません。また、観測対象が光の変動の場合は、そもそも照明による観測は不可能です。そこで、パルス照明の代わりに、連続動作するシャッタによって対象の動きの瞬間を切り取るようにすれば、それらの問題は解決します。この原理から来る効果は各種動画上でもよく見られ、例えば、蛍光灯照明下の不快な明滅、車輪が不自然な回転をしているように見える、などが挙げられます。

ハードウェア

メカニズム

図1. ロータリシャッタ

まず、毎秒100回以上の速度で、かつ正確な周期でシャッタを開閉する必要がありますが、この手の用途にはロータリ シャッタが最適です。右の図にロータリシャッタのメカニズムを示します。回転する円板(シャッタディスク)とそれに重ねて固定されたスリット板にはそれぞれ開口部(アパーチャ)が設けられています。そして、シャッタディスクの回転によってそれぞれのアパーチャの位置が一致した瞬間がシャッタ開ということになります。アパーチャは狭いほどシャッタ時間が短くなり、ブレの少ないクリアな像が得られますが、あまりアパーチャを狭くするとそれを通して見る視野が狭くなるうえ、それだけ光量も減って視界が暗くなるので、あまり小さくはできません。このプロジェクトでは、シャッタ開時間はシャッタ周期の1/80程度としています。実際のところ、人間の目は光量に対してlog特性(ガンマ値0.3程度)で視覚上の明るさを感じているので、数値ほど暗くは感じられないようです。

図2. シャッタディスク

右の図に製作したロータリシャッタを示します。ロータリシャッタは一定の速度で回転させる必要があるため、サーボ制御によって設定した速度を保つようにしました。モータにはジャンク屋でよく売られているCDプレーヤ用のスピンドルモータを利用して、ロータリシャッタをダイレクトドライブしています。ロータリシャッタの材質は、軽量なものより金属板のようにある程度のイナーシャを持っているほうが安定した回転を得られます。回路図に示すように、モータの回転の検出は光学センサ(シャッタ ディスクに貼り付けた反射テープをフォトリフレクタで検出)を使って行っています。

コントローラ

図3. コントローラ基板

回路図

モータの駆動電源は、Li-Ion電池(1セル)をDC-DCコンバータで昇圧して生成しています。駆動回路はハーフ ブリッジによってある程度の範囲で対称駆動となるので、安定した制御ができるようになっています。ツェナダイオードは、回生エネルギの吸収のために入れましたが、実際の操作ではステップ状の急減速は行わないので、無くても問題はないでしょう(停止時はショートブレーキなので回生しない)。

ソフトウェア

ソフトウェアの機能としては、右の図に示すようなモータ回転速度のサーボ制御がメインとなります。このような速度制御の場合は、モータに与えるトルク指令に対してモータの速度が一次応答になるので、理論上はPゲイン∞(つまり単純なON/OFF制御)でOKのはずです。しかし、実際には制御周期や速度計測による遅れ要素が加わるので、そのような制御では発振してしまいます。このため、このプロジェクトでははごく一般的なPI制御としています。サーボ制御は全てバックグランドプロセス(インターバルタイマ)で行っています。応答性はあまり必要ないので、制御周期は毎秒50回としています。算出されたトルク指令(モータに流す電流)は、本来は電流フィードバック制御するところ、回路の簡略化のため回転速度から得た逆起電力(Eg)をフィードフォワード補償するのみとして、出力電圧を制御するようにしました。出力電圧はPWMでモータに与えることになりますが、PWMの分解能が8ビットと粗いため、制御周期の10倍でディザリングを行うことで分解能をかせぎ、制御の安定性を高めています。

回転速度の計測は、1回転8パルスという低レートのパルス入力において制御周期毎に新しい値を得る必要があるため、レシプロカル方式としています。レシプロカル方式の欠点は入力パルスのジッタが大きな誤差となって現れてしまうということです。実は、低速回転時に速度が微妙にふらつく現象があり、D制御を入れても改善しませんでした。調べてみたところ、リフレクタ(アルミテープ)の微妙な位置ズレによる計測エラーが原因ということが分かり、リフレクタを精密に貼り直しています。このような場合は、パターンを紙に印刷して貼るなどして、手加工は避けた方が簡単だったかも知れません。

UI制御はフォアグランドプロセスで行います。入力はジョイスティックの上下でシャッタレートの設定値の設定値を増減します。設定値は0.1sps単位ですが2段階加速として、微妙な調整と高速な変更を両立しています。電源は、ジョイスティックのプッシュでON/OFFします。ローバッテリ検出値は、3.7V以下として過放電を防止してLi-Ion電池を保護しています。

資料

Sign